天才的頭脳のウィルと精神分析医
グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち、という映画をご存じでしょうか。今回はこの映画について思うところを書きたいと思います。映画の内容に触れていますので、まだ一度も観たことのない方は、ぜひ一度ご鑑賞してから読んでいただけたらと思います。
主人公のウィル(マット・デイモン)は、天才的な頭脳を持ちながら、幼少期の体験が原因で周囲に心を開くことができず、不良仲間とその日暮らしを送っています。一方、精神分析医のショーン(ロビン・ウィリアムズ)は妻に先立たれ、進むべき道を見失っていました。その二人が出会い、葛藤しながらも次第に心の交流を深めていく感動作です。
観る度に印象が変わる
この映画を初めて観たのは高校生のときだったように思います。その当時の印象は、スラム出身の低学歴の若者がハーバード大のエリートを相手に天才的な頭脳で圧倒していく痛快青春劇でした。
しかし、20代、30代、そして現在と、この映画は観るたびにその意味深さを増していきました。映画の核となるシーン、虐待を受けてきたウィルに「君のせいじゃない。君は悪くないんだ」とショーンは何度も何度も繰り返し伝えます。「分かってる」というウィルに対し、それでも「君のせいじゃないんだ」と言い続けるショーン。
今のわたしが観ると、このシーンがこの映画の本質、心臓部であり、人々の抱えるこころの問題を真正面から描いている渾身の名場面と感じます。
自分を責めてしまう心の傷
虐待やいじめは、客観的に見れば100%行う側に問題があります。しかし、当事者間において、どちらが悪いのかという基準は強者側の理屈によって、簡単にすげ替えられてしまうようです。
「君のせいじゃなかった」「君は悪くなかった」。たとえ虐待やいじめほどはっきりとした記憶はなかったとしても、今のわたしたちが、幼かった自分に向ってこの言葉を投げかけてあげることで、救われたと感じる人は少なくないように思います。
だれもが葛藤し、ときには逃げ出しながら、あきらめながらも生きています。それでも、あのときの自分は、賢明ではなくとも懸命に、必死に生きていたと知っている。それは、他でもないわたしたち自身です。
「おれは、よくやってきたよ」
最後のシーン、ウィルの旅立ちのとき、彼のこころの内は、そんな心境ではなかったか思います。
驚きの才能
この映画に関して、すごい!と感じるプチ情報を追記しておきます。
マット・デイモンと親友のベン・アフレックはハーバード大時代に2年の歳月をかけてこの映画の脚本を手がけ、完成させています。そして、この二人は自分たちで脚本を持ち込むことで、映画化にこぎ着けています。今や押しも押されぬ大スターとなった二人ですが、学生当時からこれだけの精神性の高い、それでいて爽快感のあるストーリーを考え付くこと自体が驚きですよね。
みなさん、これは観ておいたほうがいい!という映画があったらぜひ教えてくださいね。
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