禁止令とは
今回は『禁止令』というキーワードを中心に、幼少期の体験が大人になった今でも、日々の生活や、もっと言ってしまえば、人生そのものに大きな影響を及ぼしている。というお話をします。
まず『禁止令』とは何なのかというところから話しますね。禁止令とは、文字通り「◯◯してはいけない」という命令のことです。わたしたちは子供の頃、もの心がついてくると、「おもちゃは独り占めしてはいけません」、「スーパーやご飯屋さんで大きな声を出してはいけません」など、家族から〇〇はダメとうい命令を受けます。
「テレビばっかり見ていてはダメ」「見ず知らずの人についていってはダメ」「道路で走ってはダメ」「高いところに上ってはダメ」など、多くの場合、家族が発する「禁止令は」子供の為を思ったもの、周囲とうまくやっていくために愛情をもっての言動です。
ですが、良かれと思って発したメッセージも、何度も繰り返し、いたるところで発せられた言動は、時として子供の将来に深刻な影響を及ぼすことになります。
例1:子供であってはいけない
たとえば、「あなたはお姉ちゃんなんだから、妹の面倒を見なさい」「お兄ちゃんなんだから、泣くんじゃない」などは『子供であってはいけない』という禁止令です。長男、長女の人は、この環境で育った場合が多く、早く自立しなければならないという思い込みから、大人になったとき[人にあまえられない][気を遣ってしまい楽しめない][自分が動かなければならないと思う]というような自分への制限をかけてしまうことがあります。
例2:自立してはいけない
これとは逆に『自立してはいけない』という禁止令もあります。例えば、母親が何でも先回りして用意してあげることや、どんな部活や習い事をするのかも、親が口出しして決める場合など、「自分で責任を取らずに決めてもらえるならずっとそうしよう」と、何もできない、何も決められないことを選ぶようになります。この環境で育った子は[自分の責任で決断できない][楽な方を選ぶ][自分が動かなくても誰かがやってくれる]という怠惰な大人になることがあります。
例3:健康であってはいけない
次に『健康であってはいけない』という禁止令があります。子どものときに熱を出して寝込んだ時だけ、両親が特別に優しくなる。身体の弱い兄弟がいて、両親はいつもその兄弟の方ばかりをかわいがっていた。など、健康じゃない方がいい思いをする、という認識が定着してしまいます。この環境で育った子は、大人になって[ちょっとした風邪や怪我で大げさに振舞ってしまう][暴飲暴食を繰り返し、健康な身体から遠ざかる]などの行動をとってしまうことがあります。
この他にも、アメリカの医学博士のグルーディング夫妻によると、ネガティブな影響を及ぼす代表的な禁止令は13個あると言っています。興味のある方は調べてみて下さい。
今回は、もう一つだけ禁止令の例をあげて終わりたいと思います。
これは、最も個人の人生にネガティブな影響を与えてしまう、罪深い禁止令です。
それは『存在してはいけない』という禁止令。
例4:存在してはいけない
これは、幼少期に虐待を受ける、親から無視されるなど、身体的な存在否定はもちろんのこと、「お前さえいなければ違う人生だったのに」「お前のために自分の人生をあきらめた」など、言葉による存在否定も同じです。
この環境の中で育った人は、[自分はいてはいけない存在][自分は無価値な人間][いない方がいい人間]と思い込むことで、自分の身体や命を大切に思えなくなってしまいます。大切に思えないどころか、自ら傷つけ、薬物などに依存していく場合もあります。人生に価値を感じられず、余りある才能や本来持っている思いやりの心を発揮することなく、無気力に過ごしてしまう人がいます。
本当に悲しいことだと思います。
ただ、言えることは、この環境をつくった両親や家族を責めたところで何の解決にもならないということ。なぜなら、家族や両親もまた、いくつもの禁止令を抱えながら大人になったはずだから。だから、わたしたちは、負の連鎖に気が付いた人が、その負の連鎖を断ち切らなければなりません。先に挙げたケースほど深刻ではないとしても、わたしたちはみんな、様々な禁止令の中で育ち、大人になった今でも、その禁止令に影響を受けています。これは「いい、とか、わるい」とかの話ではなくて、重要なのはその事実を知ること。冷静に過去を見つめなおすことで、より前向きな溌剌とした人生がひらけていくということです。
ウェルビーイングな人生を送ることは、「過去を理解すること」がとても重要な手がかりになります。「両親を責めるような考えはしたくない」と思われるかもしれません。
でも、ご両親が何より一番望んでいることは
「あなたの人生がキラキラと輝くこと」
のはずです。
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